私たちは,海底観測によって東北沖地震の発生時に海溝近くで生じた大規模地殻変動を捉え,それが浅部すべり発生の動かぬ証拠となりました.
断層は地震発生後の過渡的な回復過程のなかで,今もなお動き続けている可能性がありますが,断層でのすべりには様々な現象が伴うことが想定されています.
そこで,想定されるあらゆる可能性を考慮に入れた他項目同時観測を実施します.
中でも最も私たちが重要と考えているのは,断層運動の直接計測です.
現在の海底地殻変動観測では,観測データの時空間的な間隔が十分ではないために,断層すべりの量の推定精度には限界があります.大地震発生後の過渡期にあるいま,断層すべり以外の要因による変形も同時に進行していることが想定され,断層すべりの把握には工夫が必要です.
私たちは,海溝軸を跨いで距離を連続測定することで,断層すべりの連続モニタを実現します.こうした断層運動の直接測定は,沈み込み型プレート境界では世界でも初の試みとなります.